ことわざ作りのススメ~ことわざの敷居は高くない!作っちゃえ!使っちゃえ!~
ことわざって、結構おもしろいんじゃないか。そんなことを急に思い、今回は「ことわざ」について何かを書こうと考えました。
そこで何はともあれ「ことわざ辞典」を「あ」から順々に見ていくこと数分、私の中になにか違和感と言いましょうか、やるせない気持ちが湧き始めました。
その原因が何なのか掴めないまま、気のせいだろうと読み進めていくこともう数分、ひとつのことわざと出会い、私はその違和感が何であるかをはっきりと認識しました。
『あんころ餅で尻を叩かれる』
意味:思いがけずうまい話が舞い込んでくることのたとえ。
私が抱いていた違和感は、おそらく時代錯誤という違和感でした。
きっと当時あんころ餅はとんでもなく貴重だったのでしょう。お米や甘味はなかなか手の届かないものだったのだと思います。
しかしそうではなくなってしまった今の世において、実際に『あんころ餅で尻を叩かれ』るようなことがあったとしたら、それは思いがけず舞い込んだうまい話どころか思いがけなく降りかかった惨事でしかありません。
お尻にあんこが付いたりお餅がついたりもう最悪です。いったんうちに帰りたいです。帰らしてください。帰りの電車も座れません。自転車も家までずっと立ち漕ぎです。いっそハリセンで叩かれたほうが幾分もマシです。すみません、想像して取り乱してしまいました。
ことわざを文字通りに受け止めるなんてナンセンスだと言われてしまいそうですが、あまりに共感を呼ばないことわざが「あ」を見ただけでいくつもありました。どうにかならないものかなぁと悩んでいるときに、私はもうひとつのことわざに出会い、今回の企画に辿りつきました。
『案じるより団子汁』
意味:くよくよと心配してみてもしょうがない。そんなときには、せめて団子汁でも食べて気を紛らわした方がよいという助言。
このことわざ、ちょっとした食卓の会話の軽口から生まれたみたいな感じがします。
ある家庭の夕食風景。部活動のことで悩み、食のすすまない息子を見て父が「ほらカズヤ、せっかくの団子汁が冷めてしまうぞ。いつまでも悩んでいてもしかたないじゃないか。案じるより団子汁、なんてな。お、我ながらうまいこと言ったなぁ。ハハハハ。」それを見て母も「まぁ父さんたら。ウフフ。」
みたいな感じで出たひとことなんではないかと疑ってしまうような、その成り立ちにユルさを感じさせることわざです。これが今日に至るまで残っているのがとても不思議です。父さん、えらく気に入って、その後会社や町内会でも多用したのかもしれません。もっともらしい意味を後から付け加えて。
なにが言いたいかというと、ことわざなんて気軽に作っちゃえばいいんじゃないか。私たちの時代に合った、というかもう自分が欲しい新しいことわざをどんどん作ってどんどん使っちゃえばいいんじゃないかということです。
団子汁の件のように、何かのはずみでそれが後世にまで残ったら最高ですが、そこまでは望みません。今の時代に生まれて、次の時代には消えていく、そんなことわざがあってもいいのではないでしょうか。(団子汁のことわざの出自を勝手に適当なものにしちゃってますが、どこかの文学者が三日三晩寝ずに考えてやっとのことで捻り出したものだったとしたら、非常に失礼な話ですね。ごめんなさい。)
そこで、まず隗より始めよということで、今回はいくつかことわざを作ってみたいと思います。
『ミラノ風ドリアのみにも笑顔』
意味:サイゼリヤにおいて最安値のミラノ風ドリアのみを注文したお客さんにも笑顔で最高の接客をすることから転じて、誰に対しても分け隔てなく平等に接すること。
自分のアルバイトの経験から作ってみました。サイゼリヤクルーの中ではミラノ風ドリアのことを「ミド」と呼ぶので「ミドのみにも笑顔」と略すことも可です。ほんとは響き的に「ミラノ風笑顔」で通じるようにしたいところですが、本当にミラノの風情を感じさせる笑顔のことを言いたいときにややこしくなってしまうので、ナシにします。
『自販機に1020円』
意味:自販機で120円の飲み物を買うときに、1000円ではなく1020円を投入してイイ感じのつり銭を得ることから転じて、一つ先を見越して最良の策を講じること。
用例を出そうと思ったのですが、私自身、一つ先を見越して最良の策を講じている時なんてのはまさに自販機に1020円を入れてる時くらいなもんなので、他の場面が思いつきませんでした。
ぜひ政治家のみなさんにこのことわざを使っていただきたいです。「わたくし○○は、自販機に1020円、自販機に1020円をモットーに…」街頭演説なんかで聴こえてきたら、思わず足を止める人がいると思います。「一体こいつは何の話をしているんだ!?」
『ラッシャー枝豆』
意味:たけし軍団の二人、ラッシャー板前とつまみ枝豆をごっちゃにして呼称してしまうことから転じて、類似のものを混同すること。
だいぶマニアックなことになってきてしまいました。この記事を読んでいる一体何人の方がこの二人をはっきりと認識しているでしょう、私にはわかりません。でも、きっとことわざなんてそんなもんです。「まず隗より始めよ」にしたって、「隗」って誰だって話です。そのうち意味だけが一人歩きする日を待って、このことわざを温めていきたいと思います。そして私事で恐縮ですが、「ラッシャー枝豆」と言ってしまいそうになる気持ちがわかるという方が万が一いる場合は、一報ください。お友達になれそうです。
『周回遅れでトップをあおる』
意味:周回遅れであるにも関わらず前方の走者をあおることから、普通に考えたらできないようなことをする不屈で強靭な精神のこと。
このことわざはとても微妙なニュアンスを含みます。基本的には「自分より上位に居る圧倒的な強者に、気持ちの面では劣ってない様子」をあらわし褒めていますが、同時に「まあちょっと頭いっちゃってるよね」「自分のおかれた状況見えてないよね」みたいな感じもなくはありません。
なんせ、周回遅れで前方の選手をあおっているわけですから。通常の精神じゃありません。
これは適当に使うと人間関係に波乱を巻き起こしかねないので、おもに自分自身の行動について表現するときに使うことをおすすめします。
「あの時、偏差値30だった私がハーバード大学を目指すというのは、周回遅れでトップをあおるといったところであった。」
『Enterキーを強打する』
意味:パソコンで入力をしていて最後にEnterキーを押す際に不必要に強打する様子から、ここぞというところでドヤ顔をすること。
中学校のパソコンの授業のときに、キーボードを打つのが早い子のEnterキーの押し方が必要以上に強かったという思い出からできたことわざです。
私が全くパソコンができなかったせいか、その子がなんか色々打った最後にバシっとEnterを押すそのしぐさが「ドヤ!!」と言わんばかりに見えてしょうがなかったです。半分ひがみです。本人にそのつもりがあったかどうかはわかりませんが、もうそう見えちゃったので、それはドヤ顔です。
『考えるよりジンジャエール』
意味:あれこれ堂々巡りに考えてばかりいてもしょうがない。そんなときには、ジンジャエールでも飲んで気を紛らわした方がよいという助言。
これはお気づきのとおり、先ほどの団子汁のカバー作品です。団子汁の前例があるだけに、ひょんなことからこのことわざが後世にまで残ることを思わず祈ってしまいます。
今回は「背伸びしない」「自分の経験に馴染む」、だから「多少マニアックになってもしかたない」をポイントにことわざを作ってみました。
ことわざの敷居は案外低いです。みなさんもぜひ、ことわざを作ってみてください。そしてできたらこつこつ使い始めてください。いつの日かあなたの生んだことわざが辞典に載る日が来るかもしれません。そんなロマンを感じられる、ことわざ作りのススメでした。